乳び胸
乳び胸とは
乳び胸とは、胸腔内に乳びと呼ばれる胸水が貯留する疾患です。
乳びとは、脂肪あるいは遊離脂肪酸が乳化しリンパに混ざった乳白色の液体で、食事が小腸で消化される際に形成されます。
乳び胸の際に認められる症状としては、呼吸促迫、食欲低下、嘔吐、発咳、運動付帯性、一般状態の低下などがあります。
乳び胸が持続する場合、乳びによる炎症が惹起され線維性胸膜炎が起こります。
乳び胸は一次性(特発性)と二次性(続発性)に分けられます。
続発性乳び胸は、右心不全(心筋症、フィラリア症、心膜液貯留、ファロー四徴症、三尖弁異形成、右三房心、収縮性心膜炎など)、腫瘍疾患(リンパ腫、胸腺腫など)、真菌性肉芽腫、前大静脈血栓症、横隔膜ヘルニア、肺葉捻転、外傷など様々な原因により発生します。
それに対して、一次性(特発性)は原因がわかっていません。犬においては、アフガンハウンド、ボルゾイ、柴犬、猫においては、シャムやヒマラヤンで発生が多いですが、その他の犬種猫種でも発生が認められます。
乳び胸の診断は、血液検査、胸水分析(トリグリセリド値、コレステロール値など)、X線検査などの画像診断を組み合わせて行われます。
二次性(続発性)乳び胸の疾患が除外された場合に、一次性(特発性)乳び胸と診断されます。
治療
特発性乳び胸の治療は大きく内科治療と外科治療に分けられます。
内科治療
- 食事管理:低脂肪食、中鎖脂肪酸トリグリセリド、完全非経口栄養
- 胸水抜去
- ルチン
- ソマトスタチン、オクトレオチド
- その他
猫においては、ルチンによる内科療法が奏功する場合が報告されていますが、犬の特発性乳び胸においては一般的に外科治療が第1選択となります。
外科治療
特発性乳び胸に対する外科治療は以下の術式が組み合わせて行われます。
- 胸管結紮
- 乳び槽切開
- 心膜切除
- 胸腔腹腔シャント
- 胸管塞栓