
犬の胆嚢粘液嚢腫|症状が出る前に見つけて、元気なうちに手術を
「胆嚢(たんのう)に粘液がたまっています」と健康診断で言われて、驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)は、症状が出ないうちに見つかることが多い一方で、進行すると命に関わることもある病気です。今回はこの病気について、見つかったあとの考え方を中心にご説明します。
胆嚢粘液嚢腫とは
胆嚢は肝臓のそばにある、消化を助ける「胆汁」を一時的にためておく小さな袋です。
胆嚢粘液嚢腫は、この袋の中でゼリー状の濃い粘液が異常に増えてしまう病気です。粘液が胆嚢いっぱいに広がると、胆汁の流れがさまたげられ、胆嚢の壁そのものも傷んでいきます。

なりやすいワンちゃん
中高齢の小型〜中型犬に多く、10歳前後で見つかることが多い病気です。犬種では次のような子で報告が多くなっています。
- シェットランド・シープドッグ
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- ミニチュア・シュナウザー
- ポメラニアン、チワワ、ボーダー・テリア など
また、脂質の代謝がうまくいっていない子(高脂血症)や、甲状腺機能低下症・副腎皮質機能亢進症といったホルモンの病気をもつ子でも起こりやすいことが知られています。これらの病気が隠れていないか、あわせて調べることが大切です。
症状が出にくいのが特徴です
初期はほとんど症状がなく、別の目的で行った超音波検査でたまたま見つかることが少なくありません。
進行すると、次のような様子が見られるようになります。
- 元気がない、食欲が落ちる
- 嘔吐、下痢
- おなかを痛がる、さわられるのを嫌がる
- 白目や歯ぐきが黄色くなる(黄疸)
ただし、これらの症状が出てきたときには、すでに胆管がつまっていたり、胆嚢が破れかけていたりすることもあります。
診断
血液検査で肝臓や胆道の数値(ALT・ALP・GGT・ビリルビンなど)の上昇がみられることが多く、確認には腹部の超音波検査が最も有用です。
粘液がたまった胆嚢は、超音波で「キウイフルーツの断面」に似た特徴的な模様に見えます。ドロっとした胆泥は体位を変えると動きますが、粘液嚢腫は動かないことでも見分けられます。あわせて、胆嚢の壁が厚くなっていないか、破れそうな所見がないかも確認します。
治療は手術(胆嚢摘出術)が基本です
粘液そのものを溶かして治すお薬は、残念ながらありません。そのため、胆嚢を摘出する手術が基本の治療になります。
ここで大切なのは、どのような状態で手術を受けられるかです。症状が出る前の元気なうちに計画的に行う手術と、胆嚢が破れて腹膜炎を起こしてからの緊急手術とでは、体への負担も危険性も大きく変わります。報告により幅はありますが、無症状のうちに計画的に行った場合の手術後の死亡率がおよそ5%前後であるのに対し、緊急手術になった場合は20%を超えるとされ、およそ3〜5倍の開きがあります。
一方で、手術を乗り越えられた子の長期的な経過はとても良好です。だからこそ当院では、破れる前の、元気なうちの手術をおすすめしています。

なお、麻酔のリスクが高い場合や、ごく初期で経過をみる場合には、利胆薬などのお薬を使いながら定期的に超音波でチェックしていく方法もあります。その場合も、進行のサインが見られたら手術に切り替える判断が必要です。
当院での手術について
当院では、腹腔鏡を使った胆嚢摘出術にも対応しています。おなかを大きく切らずに数ミリの穴で行えるため、痛みが少なく回復も早くなります。JSVES(日本獣医内視鏡外科学会)の内視鏡外科認定医を含む内視鏡外科チームにて手術を実施していますので、適応かどうかも含めてご相談ください。
腹腔鏡を使った胆嚢摘出術については、負担の少ない腹腔鏡下胆嚢摘出術|胆嚢粘液嚢腫は破れる前の手術が大切で手術の方法や傷の大きさをくわしくご紹介しています。あわせてご覧ください。
まとめ
- 胆嚢粘液嚢腫は、胆嚢にゼリー状の粘液がたまる病気
- 初期は症状が出にくく、健康診断の超音波で偶然見つかることも多い
- 中高齢の小型犬、とくにシェルティやコッカーで報告が多い
- 溶かす薬はなく、胆嚢摘出術が基本の治療
- 破れてからの緊急手術は危険が大きく、元気なうちの計画的な手術が安全
健康診断で胆嚢の異常を指摘された方、上記の犬種を飼われている方は、お気軽に当院スタッフまでご相談ください。









































